【42 Tokyo】Piscineとは?過酷な入学試験の傾向と対策【合格率4%】

あなたがエンジニアの階段を上りたいと思っているのなら、Piscineは大きな一歩となる。

エンジニア養成機関「42 Tokyo」の入学者選考は、4週にわたって行われるハードな試験だ。

試されるのは忍耐力や協調性をはじめ、エンジニアに求められるさまざまな資質。一般的な試験とは様相を異にするため、きっと身構えてしまっている方も多いことだろう。

そこで本記事では、42のガイドラインに抵触しない範囲で、Piscineの傾向と対策をまとめてみた。試験内容の口外は禁じられているが、それでも前もって準備できることは多い。

Piscineを受けられるのは一度きり。悔いを残さないように、万全の状態で臨んでほしい。

Piscineとは?42 Tokyoの入学者選抜試験

Piscineとは、エンジニア養成機関「42 Tokyo」が行っている入学試験の名称だ。この試験を突破することで、晴れて42 Tokyoに入学することができる。

ちなみにPiscineとは、フランス語で「スイミングプール」を指す。受験生を冷たい水に突き落とし、最後まで泳ぎ切れた者を合格とする。そんな意味が込められている。

過酷な試験と聞いて、思わず身構えてしまう人もいるかもしれない。だが、Piscineを泳ぎ切った身から言えば、人生でこれほど楽しい試験はなかった。

もし不合格なら悔しい思いをしただろうが、その後の人生の糧ととなったことに変わりはない。

右も左も分からないまま、手探りで答えを求め続けた4週間。昼夜を問わず、オンライン/オフラインを問わず、仲間とともに考え抜いた日々だった。

新しい世界に飛び込みたい学生はもちろん、もう一度何かを学び直したい社会人にとっても、Piscineはかけがえのない経験を与えてくれる。

エンジニア養成機関「42 Tokyo」

(引用:42 Tokyo公式HP

42 Tokyoは、東京・六本木に拠点を置くエンジニア養成機関である。学費が完全無料化されている点や、ピアラーニングを中心とした教育方法が話題となり、2020年の開校から徐々に学生数を増やしてきた。

そもそも「42」と呼ばれる教育ネットワークはフランス・パリを本拠地としている。設立は2013年。学歴主義が根強いフランスで、優秀なエンジニアの芽が摘まれている。そのことを危惧した篤志家たちが、巨額の資産を投じてスクールを設立したのである。

以後、42のネットワークは全世界へ伝播していく。その特異な教育システムは日本でも注目を集め、DMM.comの主導により社団法人が立ち上がった。協賛企業の支援を受け、晴れて42 Tokyoが設立されたのである。

42Tokyoの設立背景や教育手法については、以下の記事を参照してほしい。

42 Tokyoの入学試験は2ステップ

42 Tokyoに入学するためには、2段階の試験を突破しなければならない。一次試験のWebテスト、そして二次試験のPiscineである。

ただし、2022年5月の時点では一次試験が行われていない。入学希望者はWebテストを経由せず、いきなり二次試験のPiscineを受験することが可能だ。

もちろんPiscineへの参加に受験料はかからない。試験要綱はいつ変更になるか分からないため、興味を抱いているなら早めの応募をおすすめする。

Pisicneの合格率は?42 Tokyoの発表では約4%

(参考:42 Tokyo|お知らせ

開校から1年が経った2021年6月に、公式より合格実績のデータが公表された。それによると、Webテストの応募者数は1年間で14,091人。うち571人がPiscineに合格しており、通算合格率は4.05%とのこと。

合格率4%! 狭き門と思われただろうか? 注意してほしいのは、42 Tokyoの入学試験は誰でも挑戦できるということだ。学歴や年齢の制限はない。万人に門戸を開いている都合上、大学受験や国家資格と比べて合格率は低く出る。

また、Piscineが4週間の試験であることも念頭に置きたい。体力と精神力が問われるPiscineでは、途中で脱落してしまう受験生も一定数いる。

これは私の主観だが、Piscine最終日まで残っていた受験生の多くは合格の切符を掴んでいた。

Piscineは未経験でも十分に突破できる

Piscineを受験する上での必須スキルはない。プログラミング初心者はもちろん、コンピューターに慣れていなくてもOKだ。

実際、私もプログラミングはほぼ素人の状態でPiscineに挑んでいる。恥を忍んでいえば、受験時のスキルは以下の通りだった。

基本的なPCスキル Officeソフトはひと通り扱える。マクロは組めない。
仕事上、Webデザイナーやプログラマーと接する機会はあった。
プログラミング言語 Progateの学習を少しだけ。それもHTML/CSSを触ったくらい。
Piscine参加にあたり、C言語の参考書を一冊終えた。
その他CSの知識 アルゴリズム:バブルソートなら知っている。
ネットワーク:IPアドレスなら知っている。
Linux:触ったことがない。
共同開発の知識 まったくない。Gitの存在もPiscineで初めて知った。

「課題に取り組む上でプログラミング経験はあった方がいいのでは?」と思うかもしれない。もちろん、スキルがあるに越したことはないが、なければないで十分に勝負できる。

というのも、Piscineは個人で取り組む試験ではないからだ。分からなければ、分かる人に分かるまで教えてもらえばいい。

Piscineの前半は、どうしても人によって課題の進捗がバラバラになる。私の場合、第一の課題を突破するまでに5日かかった。先々の課題を鑑みれば、とても合格できそうなペースではない。

けれど不思議なことに、最後の週に残った受験生は自然と進捗の足並みが揃っていた。

現在Webテストが免除される

前述したように、現在はシステムの都合によって一次試験の実施が中断されている。応募者はWebテストを受験せず、いきなりPiscineに参加可能だ。

ということは、実質的な合格率は20%以上。これは希望が持てる数字ではないだろうか?

42 Tokyoの運営方針としても、学生数をより増やしたい意向がある。ピアラーニングを教育の基盤としている42において、レビューを行う学生数が多いに越したことはない。

また、オンライン環境の整備によって学校のキャパシティが増加し、いっそう多く学生を受け入れられるようになった。地方に分校を置くプロジェクトが立ち上がるなど、現在の42 Tokyoは拡大期にある。

つまり、今が42 Tokyoに応募するチャンスということだ。挑戦してみなければ何も始まらない。そしてPiscineの場合、たとえ不合格でも失うものはほとんどない。

42 TokyoのPiscine試験日程は?隔月でオンライン/オフライン開催

2022年のPiscine開催日程は以下の通り。

2月入試
2月7日(月) ~ 3月4日(金)
3月入試
3月7日(月) ~ 4月1日(金)
4月入試
4月18日(月) ~ 5月13日(金)
6月入試
6月13日(月) ~ 7月8日(金)
8月入試
8月8日(月) ~ 9月2日(金)※オフラインのみの実施
10月入試
10月3日(月) ~ 10月28日(金)
12月入試
11月28日(月) ~ 12月23日(金)※オフラインのみの実施

(参考:42 Tokyo|募集要項

新型コロナウイルスの蔓延が収束に向かっているため、現在のPiscineは開催頻度が大幅に増えている。

基本的にPiscineは隔月で開催されているので、直近で都合のつく日程を選ぶようにしよう。学生の場合は春季休暇や夏季休暇、社会人の場合は仕事の閑散期を狙いたい。

また、完全オフラインでの開催が予定されているのも大きなポイントだ。本来のPiscineは、オフラインを前提とした試験であった。コロナ禍でリモート環境への移行が進んだとはいえ、まだ対面で取り組む意義も失われてはいない。

ただし、オフラインの場合は東京・六本木の校舎に毎日通うことになる。遠方から参加する場合は、ホテルやゲストハウスの手配を早めに済ませておこう。

42 TokyoのPiscine合格に向けて:事前準備編

ここからは、Piscineに合格するためのポイントを解説していく。

といっても、具体的な試験内容を公表することはガイドラインで禁じられている。ひょっとすると裏情報が流れてくるかもしれないが、そのような噂に惑わされるべきではない。

再三にわたって述べてきたように、Piscineは未経験者でも突破できる試験だ。情報過多に陥るくらいなら、以下で挙げるノウハウを押さえておくだけでいい。

いずれにせよ、試験内容は今後改訂される可能性がある。情報の海に溺れないこと。これがPicineを泳ぎ切る最初のポイントだ。

プログラミング学習

それでは、試験までに行うべき準備を考えていこう。

私の場合、具体的な準備を始めたのはPiscine開始の4週間前だった。

気になっていた42 Tokyoへの入学を決意し、ダメもとでWebテストを受験。成績は散々だったが辛うじて合格し、慌ててプログラミングの入門書を購入した次第だ。

この時点ではフルタイムで仕事をしており、一日に充てられる学習時間は多くて4時間ほど。主に図書館やカフェで参考書を広げていた。

SNS上での交流

実のところ、私はこれを実践していない。だが後から振り返ってみると、SNSで交流を持つべきだったかもしれない。

Twitterでハッシュタグ検索をすれば、同じPiscineの参加者を見つけることができる。情報共有をするのもいいし、モチベーションを高め合うのもいい。

コミュニケーションを大切にしなければ、Piscineの壁は乗り越えられない。とはいえ、見ず知らずの人にいきなり話しかけるのは勇気がいる。

SNSであらかじめ繋がりを持っておけば、ハードな環境にも初日から順応できるだろう。

スケジュール調整

Piscineはフルコミットを前提とした試験だ。このことは公式FAQにも明記されている。

こと日本社会において、4週のあいだ学校や会社を休むことは簡単ではない。タスクを抱えている場合は早めに片付けるなど、各自で調整が必要だ。

また、公共料金や税金の支払いも済ませておきたい。Piscine期間中は課題に没頭するあまり、日常生活の雑事がおざなりになる。正直、洗濯やシャワーを浴びる時間さえ惜しくなるくらいだ。

生活用品など、備蓄できるものはまとめ買いしておこう。パートナーがいる場合、お互いの予定をすり合わせておくようにしたい。

リモート環境の確保(オンライン参加)

オンラインで参加する場合、リモート環境の確認もしておきたい。

過度のマシンスペックは要求されないが、課題のコードレビューはチャットツールを介して行われる。これが意外とメモリを食うため、不安なら増設してもいいかもしれない。

あわせて、レビューに必要なWebカメラも用意しておこう。特に解像度は求められておらず、内臓カメラで十分だ。ただし普段Webカメラを使わない人は、念のために動作チェックをしておきたい。

ホテルなど宿の確保(オフライン参加)

42 Tokyoの校舎は東京都港区六本木にある。遠方からオフライン参加する場合、その周辺で宿を確保しなければならない。

私がPiscineを受験したときも、4週間だけ宿を取っている人は珍しくなかった。ビジネスホテルを予約したり、シェアハウスを契約したり、友人の家に転がりこんだりと、人それぞれ工夫があって面白い。

たとえ自宅から通学できる距離だったとしても、六本木周辺のホテル情報は押さえておくと便利だ。終電を逃したときに一度か二度、ひょっとすると何度もお世話になる可能性がある。

42 TokyoのPiscine合格に向けて:試験期間編

いよいよPiscineが始まる。初日は公式ガイダンスがあるため、忘れず出席するようにしたい。

以下で紹介するのは、Piscine期間中の心構え的なものだ。課題を進める過程で困難に直面したら、もう一度この記事を開いてほしい。

繰り返しになるが、課題内容の公開は禁じられている。というより、知ったところで大した得にはならない。もがきながら進むからこそPiscineは楽しいのであり、楽しんだ者が最終的に合格できる。

まずは初週を乗り越える

Piscineは長距離走だ。スプリントのつもりで駆け出すと、1週間もしないうちに息を切らす。

最初の数日間は、いわばペース配分を掴むための区間である。無理をせず、Piscineという過酷な環境に身体を慣れさせよう。42 Tokyoのシステムが分かれば、課題の進め方も鮮明になってくる。

オンラインでは受験生同士のやりとりが行われているはずなので、気軽に参加してみよう。

たとえ他の人より課題が進んでいなくても、特に気に留める必要はない。先に進んでいる人の力を借りれば、後半いくらでも巻き返せる。

最も大事なのは、ここで諦めないことだ。Piscineは初週での脱落者が異常に多い。逆にいうと、最初の週末さえ乗り越えれば希望が見えてくる。

食事はタンパク質と野菜中心

普段あまり食事に気を遣わない人は、この機会に栄養バランスを意識するようにしたい。

私自身、Piscineの期間を通して食事管理の大切さを思い知らされた。課題に集中する日々が続くと、食事による身体の変化に対して鋭敏になる。

(フィットネスを趣味にしていない限り)PFCバランスまで正確に計算する必要はないが、不足しがちなタンパク質と野菜は積極的に採りたい。

料理が面倒なら、スーパーでサラダチキンや鯖缶、カット野菜などを買い込んでおこう。

これは余談だが、自炊派なら「沼」もおすすめだ。調理時間はほとんどかからないし、食費も抑えられて(そこそこ)美味しい。一週間も続ければ、身体が軽くなった感覚を得られるだろう。

睡眠は意識的にとる

個人差はあるが、睡眠時間は多めに確保したい。私の場合、7時間以上をひとつの目安にしていた。

他の受験生が夜遅くまで活動していると、つい自分も残ってしまいがちだ。中にはいつ寝ているのか分からないような超人もいるが、あまり気にしないほうが良い。

たとえ若くて体力に自信があるからといって、基本的に徹夜は避けたい。少しでも思考力が鈍ると、途端にプログラムが書けなくなる。

不正行為は厳禁(バレる)

当たり前のことだが、不正行為は厳格にチェックされる。

他人の提出物を写したところで何の得にもならないし、どうせ最終的にはバレる。

もし他の人の考え方を参考にしたいのであれば、課題のレビューを通して積極的に交流を深めよう。

Piscineには本当に優秀な人が集まってくる。自分では考えもつかないような解法で、整然とコードが書けるような人たちだ。

コードレビューは、そんな優秀な人の思考回路を覗くチャンスである。時間の許す限り質問して、少しでも多くのスキルを盗んでおきたい。

Piscineの合格基準は?答えは42 Tokyoの教育哲学にある

さまざまな観点からPiscineのポイントを述べてきたが、何より気になるのは合格基準だ。

Piscineの4週間では複数のパラメータが可視化される。課題の評価、活動時間、仲間への貢献度。おそらく、内部的な数値も多くあるはずだ。それらを総合的に考慮した上で、最終的な合否が決まる。

それでは、最も重要な数値は何か?  これも推測でしかないが、答えはすでに出ている気がする。

42の掲げる教育学の根幹にあるのはピアラーニング――より具体的にいえば、コードレビューを中心とした学習――だ。

特定の講師を置かずに、学生同士がそれぞれの課題を評価することで高め合っていく。42 Tokyoの学習環境が無料で維持できているのも、このコードレビューの仕組みによるところが大きい。

この点を踏まえれば、4週間における身の処し方は決まってくるのではないだろうか。

42 Tokyoの入学試験「Piscine」は未知との遭遇である

(引用:42 Tokyo公式HP

42 Tokyoの入学試験「Piscine」を突破するためのポイントを解説してきた。

1日16時間、目の前のコードとひたすら向き合う。合計400時間を超えたコミット量は、それ自体が大きな意味を持つものだ。

人生において、努力の過程が必ずしも評価されるとは限らない。Piscineを乗り越えたらといって、履歴書やポートフォリオに箔が付くこともない。

それでも、全身全霊を込めて打ち込んだ経験は、間違いなく自信につながる。

何より、コーディングは楽しいものだ。42 Tokyoの存在を知らなければ、いまの日常はもっと退屈になっていただろう。

ここまで読めば、準備運動はもう十分だ。あとは恐れることなく、Piscineのプールに飛び込んでほしい。

42 Tokyoでエンジニアへの一歩を踏み出す

(引用:42 Tokyo公式HP

東京・六本木に拠点を置くエンジニア養成機関「42 Tokyo」では、学生同士のピア・ラーニングを基本理念として、質の高い教育環境を無償で提供している。

性別や年齢、経歴は問わない。たとえプログラミングが未経験でも、これから好きになる意志さえあれば入学できる。

あなたが/あなたの世界を塗り替えたいと思ったら、今すぐ4週間の入学試験「Piscine」に飛び込もう。

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